●「竹中大工道具館」H18年度企画展 展示用銘木鉋掛け 【作業日誌】


【目次】
6月5日 「鉋削り始まりました」
6月6日 「2日目です」  
6月7日 「3日目」    
番外編 「砥ぎ」     
番外編 」台仕込んでます」
6月8日「4日目 来客ばかり」
6月9日「5日目電気鉋三昧」
6月12日 「平治鉋削り」 
6月13日 「きはだ」   
6月14日 「栗 黒松」  
6月15日 「黒松 杉3枚」
6月16日 「屋久杉には・・」
6月19日 「栃 ケヤキ」  
6月20日 「お客様   」
6月21日 「山形杉」   
6月23日 「春日局欅登場」
6月26日 「栃の小口」
6月27日 「本当は。。」
6月28日 「霧島杉」
6月29日 「春日局欅」
6月30日 「神戸展用」
7月3日  「春日局欅」
番外編  「銘木達」
【注意】 この文章は 聞き取りにより書かれている為 表現が本人の感覚と多少違う場合があります
技術的な事でお聞きになりたい事がありましたら 掲示板 メール 電話などで問い合わせください

【銘木鉋削りリスト】

樹種

大きさ(厚みx幅x長さ)

樹種

大きさ

青森ヒバ

130x630x2400

銀杏

180x430x2470

霧島杉

150x750x2520

黒松

80x900x1900

屋久杉

130x680x1970

脂松

80x650x3030

山形杉

150x900x2450

かえで

55x280x2000

きはだ

120x600x2160

120x660x1980

120x900x1820

115x1060x2350

けんぽなし

150x440x1860

塩地7枚組み板

180x460x2250

水芽

120x340x2100

塩地

105x385x2180

春日局欅

130x900x4750

神戸展用春日局

60x920x1960



7月6日番外編「銘木たち」

手鉋仕上げられた 銘木18点は 8月半ばに竹中工務店東京本社1Fの「東京展」の会場に
展示されるまで 埃避け程度の簡単な養生のまま 保管庫に保管されます

養生をした状態ですが 仕上がった銘木たちを紹介します【一部をのぞく】

青森ヒバ

けんぽなし

楓 しちょう 塩地(組板) 水芽 塩地

脂松



黒松 栗 きはだ

山形杉

屋久杉

霧島杉


7月3日神戸展用「春日局欅」

最後の一枚 神戸展用「春日局欅」の仕上げ鉋をする

最後の日は 耕木杜のスタッフも現場の打ち合わせがあって 今日は来れない
掃除は 先週 隅々までやってもらったが 流しなどの 片付け 
運び出しはどうしようかと 困っていた

埼玉から 知り合いの大工さんがボランテイアに来てくれた 
彼には ここ何回か 耕木杜の上棟の手伝いに来てもらっている
短い期間だが きざみも手伝ってもらった


坊主頭 しかし 以前と風貌が違う 坊主頭 それも 高校球児並みの短さ
「実は少し前に 髪を剃りました」と彼は言った

大工をするのなら 住む人が幸せを感じる家を建てたい
自分から見れば 技術はともあれ 手刻みを実行していた数少ない大工さん
2代目  「削ろう会」で出会った 歳は30代半ば
やはり この歳頃は 自分の進む道を改めて考えたくなる時期なのか
ただ 彼の周りには自分のように実践している人間はいなかった
出会った自分の言葉を 謙虚に聞き入れてくれた

現実は正直である いくら 耕木杜の勉強会に参加したり 上棟の手伝いをしても
人並み外れた技術も実績もなく 準備も出来ていない彼のところに
都合よくそんな仕事がくるはずがないのである

良い仕事がしたいと誰もが思う  なぜ来ないのかと
くれば良い道具もそろえ それに見合った勉強もして 頑張るのに
来ないから 出来ないと言う

自分にとって良い仕事 上等な仕事と言うのはどんな仕事か それすら漠然としているのに
ただ儲かる仕事か 自分の技術を向上させ納得のいく仕事かしたいのか

今がどんな状況でも 自分の将来の為に 常に技術の向上に励み 少しずつ道具を揃え 
チャンスが巡ってきた時に 気後れしないような心構えでいよう

それでもいざくれば 経験のない事ばかりで 必死に取り組まなければやり遂げ羅られない
自分も若い頃はそう思い 少しずつ職人としての 幅を広げてきた
居心地の良い 場所にいたら それまでである

二代目に その傾向が強い
彼にも 現状に持っている なじまない物や 疑問を取り除く為にも

自分で全責任を持ち 世間の風を直接受けないと と常々言ってきた

自分と一緒に刻みをする  昨年 軽井沢の小さな小屋とアトリエと仕事が重なった時
耕木杜で辞める人間がいて 耕木杜に入るはずの人間の時期が延びて
人手に困った時に 少しの間 きざみを手伝ってもらった

小さいとはいえ 自分の求める刻みの精度は高い
基本的なことを何度も注意され 怒鳴られ やがて単純なミスを繰り返すようになる
これまでの大工経験を根本から否定される 頭の中が真っ白になる
見ていて 何度か このまま帰ってしまうかも知れないと思った
実際帰ってもらったほうが 楽だと思った事もあった

カウンターの天板 アカシアと言う木でカウンターを作る はぎ合わせた天板を手鉋で仕上げる
鉋 砥石には結構詳しい それなりに良い悪いの判断の基準も彼なりに持っている
鍛治屋さんとの交流もある しかし 普段の鉋に対しての取り組みが甘い
実際手鉋で仕上げる機会が 耕木杜に比べると 圧倒的に少ない これは仕方ない
やはり実践   で鍛えなければ 真の実力はつかめない
自分が帰った後 彼は作業場でひとりで自分の今の限界に挑戦し
朝方まで鉋をかけていた 見栄やプライドなど脱ぎ捨てていた

しかしそれでも 画期的に上達はしない 仕方がない
年齢 彼はすでに若い時に比べ年齢的に技術を吸収する力が格段に落ちている

しかし もうわかったふりなどしない これから進むべき道を 生涯かけて迷わず
謙虚にただ進んでいく 心構えはこの時出来つつあった
歳を取れば技術や 気力 身体能力の衰えは 仕方がないが
自分の目標に限界など 自分で決めなくても良いのだ

自分の作業場を建てる
今彼は 大工として 自分の進む方向へ進むべく 独立して作業場を建てている
場所選び 材料 大工以外の職人の手配 金額の事 総て自分で決める

今の世の中から見れば 手仕事重視 新建材からの脱皮なんて
儲かるはずのない方向へ 苦労を承知で踏み出すのだから
家庭を持ち 家族がいて 不安で眠れない時もあるだろうが
自分の進む方向を信じ 踏み出した覚悟が 坊主頭に現れたのかな

新築工事の大工工事の依頼が来る 
早速 以前から交流のあった木材屋さんを通じて 新築工事の依頼があった
もちろん 手きざみ 無垢の材料を使って仕上げる内容の仕事 設計士さんの仕事
設計士がきちんと設計した図面がある場合は大工はそれを忠実に施工する
構造的に致命的な疑問がある場合はもちろん設計士に意向を尋ねたりはするが
それ以外は余計な口を出してはいけない それが大工の立場である
図面に書かれている範囲の中で 自分なりに精度を上げる方法 納まりの綺麗さ
効率のよさを追求していく事に専念するのである

それは変だ と考える職人も居るだろうが この自分よがりではなく 誰かの意向を
的確に汲み取り綺麗に早く形にする訓練は 今後 建主さんから直接依頼を受け
家一棟全部を任された時には かけがえのないこやしになる
思いだけが先行しても 技術や 知識に経験がなければ良い結果は作れないと思う

神戸展用「春日局欅」手鉋

しっかりと 感触をつかむ


ひたすら 追い込む


神戸展用「春日局欅」仕上がりました

「やっと終わったよー」 7月になり 夏の気配が保管庫の中にむんむんです
水汲みの為に 毎日 バケツを持って階段の昇り降りはきつかったなー
埼玉の彼に 流しなどの掃除や 運搬を手伝ってもらって 少し早めに
保管庫を出ることが出来ました
毎朝 好きな珈琲の 豆を挽き ドリップで落とし ポットに入れて 持って来ていました
疲れた体で帰る車の中で 珈琲を口に含んでいるだけで ホッとしました
今日は格別 那須の鈴木さん美味しい珈琲豆をいつも有難う

ボランテイアに来てくれた皆さん 本当にご苦労様でした 有難うございました


6月30日 4週目終了 神戸展用「春日局欅」 人間電気鉋登場

「春日局欅」も仕上がり 残りは神戸展用に追加となった長さ2m程の「春日局欅」1枚です
これまでは電気鉋で粗削りをしていましたが 機械で出る鉋屑は粉状になり
保管庫全体に舞って 鉋屑だらけになってしまいます
埃に極端に弱い自分としては マスクを掛けていても苦手 頭から 洋服から
全部細かい鉋屑にまみれてしまいます 気温も上がり汗を沢山かくので
体に着くのもいやな感じ
その点 手鉋や手鋸で削った時に出る屑は 細かすぎず 自然に落ちて 良いです
そういう訳で 今回は粗削りから 手鉋で削る事にしました

人間電気鉋(電気コード無し)は 保管庫が暑いので汗だくです
水分補給をしながら ひたすら横ずり


あれ 箒を持って掃除してくれているのは 広島の鍛治屋の石社さんではないですか
勉強の為に たまたま東京に滞在中だそうで 昨日急に連絡がありました びっくり

電車に乗れない石社さん(新幹線でも 飛行機でも 自分が運転していないと寄ってしまうらしいです)
滞在先から1時間40分かけて愛用の自転車で来られました
軽快な服装 首都高速の渋滞をよそ目に 土手沿いをずっと信号無しで走れたそうです

石社さんは昨年の今ごろ 千葉の作業場にも遊びに来てくれました
使い手としての自分なりの石社さんへの 評価 注文 今後の事
結構厳しい事も突っ込んで話しました


やはり 今後は 納得のいくレベルの鉋を 身のたつ程度に稼げる数が作れる事
直接注文の場合は 使い手にとっては特別なのだから 細かい要望にも答え
使う人の事を 念頭に入れて 何より 気を入れて誠心誠意作る事

名工と言われる鍛治屋の作った道具でも 自分は使いたいと思わない鉋も多い
高い技術で 良い材料を使って作っても 何となく出来てしまった道具に自分は魅力は感じない
鍛治屋だって 人間だから 長い製作人生の中で 上手く行く時もあれば
上手く行かない時もあるだろう 気が入るときも そうでない時も 
はっと思わせる道具は 作り手の気合や精神が ひしひしと自分の感性を揺さぶるのだ

自分の持ってる一級品の鉋でも いつも使いたいと思わせる鉋はなかった
理由はわからないが 切れるんだけど いつも使いたいとは思わせてくれない なぜだろう
ここ数年そう感じていた そんな時平治さんの鉋と出会った
自分の為に精神を込めて作ってくれた

道具は 自分を助けてくれる だから手入れもきちんとする
その上で自分の方を向いてくれている道具 作ってくれる職人が居たら
それはかけがえのない信用と 絆になるに違いない
そんな事を話した


ねじれを定規で確認しながら 粗削りを進めていく


ここで休憩 着替える


横ずりは大体終了


横ずりは 刃もちがよく 切れる鉋でなくては ならない
刃幅は比較的狭く 台は長い方がいい
刃がせまければ 砥ぎの時間も短くて済む
台が長いと 台自身が定規になり 高いところだけひろってくれる
横ずりの時に鉋に要求するのは こんな点


人間電気鉋 任務終り 


粗仕上げに入る


少しずつ仕上がっていく


あと残るは 仕上げ鉋のみ 掃除機で隅々まで掃除を済ませ本日終了です
今週もご苦労様でした
石社さん気をつけて帰ってください 今後の活躍を祈ります


6月29日 「春日局欅」仕上げる
暑い   今日は 本当に暑かった 今年一番の暑さだ

毎朝 保管庫に着くと 担当の人がすでに 窓を開け 換気設備のスイッチを入れてくれている
しかし 天井 窓が高く 風の出入りが高く 画期的な涼しさには ならない 今日は暑さとの 戦いだ
鉋削りは体力のいる作業です 鉋の刃を常に 材料に密着させて
同じ加減で引いていかなければなりません 仕上げ鉋になれば当たり前だが
途中に少しでも力が抜ければ 鉋屑が出なくなってしまいます
脚の運びも大事 引ききる間 息を止めている事もしばしばです

「鉋かけ」 鉋で木を削ることを 鉋をかけるといいます
「鉋掛け」と書かれる事も多いですが 「鉋駆け」と言う説もあります
以前は手鉋で削る作業は きざみ 造作 殆ど毎日ありました
柱が見える 真壁に塗り壁が 一般的な頃は 柱から 梁から 見える部分の
すべてを手鉋で仕上げていました
朝から晩まで 駆け足で手鉋で仕上げる ゆっくりひいている余裕はありません
当時も 杉は仕上げが難しく 鉋かけになると 来なくなる職人や 又 鉋かけを専門に
現場を渡り歩く職人もいました
「鉋駆け」と書くという説は ここから来ていると聞いた事があります

「春日局 欅」の仕上げに入る


削り始めて役2時間


今回は 銘木の仕上げなので 比較的 ゆっくりと丁寧に鉋をかけます
少しスピードがあったほうが 切れるので 艶が出る場合もありますが
この大きな面全を 真平らで 艶を出さなければならないので 逆目はたてられません

それなりの作戦を立てました写真から 想像してください


削り始めて4時間 仕上がってきた


手のひらと全身で刃先の感触を感じながら削る


仕上がりの艶 本物は 会場で見てください


今日も無事終わりました 右端に写っているのが 銘木保管庫の管理をしている
(財)日本住宅木材技術センター試験研究所の本田さん 毎日窓を事前に
あけてくれている 有難うございます

掃除をして帰ります


6月28日 「霧島杉」

心残りを残しながら 高田さん達は昨日福岡に帰りました

「削ろう会」は設立から10年がすぎ 今では 海外との交流もあり 各大会では 全国から
大勢の参加があります この会のお陰で これまで繋がりにくかった 鍛治屋さん含め
職人たちの交流が 本当に広がりました
木造建築も 各地方地方ならではの特色があります そして意外と他の遣り方を受け入れない人が多い
しかし 現在のように 木造軸組み工法その物のきちんとした技術や知恵の伝承が
風前のともし火である事や 職人を支える 道具を作る技術 良い材料がもっと危うい事を
どのくらいの人が 痛感しているでしょうか
そんな事情までは知らずとも 手仕事に関心のある若い職人が 「削ろう会」に沢山集まって
少し遠いけれど 同じ思いを持った仲間を増やしています
若い時に辛抱して どこでも通用する確かな技術を身につければ 生涯やりがいを持って 
人の役にたてるという事を 自分たちの世代が 手本にならなければなりません

微力ながら 現場で自分なりに出してきた答えを あくまでも現役の大工として
伝えたいと思っています

高田さん 関谷さん達は 九州でカンナ削り大会を開催しながら 九州でもっと
「削ろう会」を手道具の大切さを広めようと頑張っておられます
8月28日(日)福岡で第3回カンナ削り九州大会を行うそうです
招待を受けました お役に立てるのなら 行く事を約束しました

「霧島杉」を仕上げる

今日は ひとりです 耕木杜をたちあげる前は いつもひとりで仕事をしていたので それなり落ち着けます
「霧島杉」「山形杉」「屋久杉」 やはりしっとりした艶を出すのは難しい
どれも 笹杢 玉杢 銘木独特の 枯れた 目の込んだ杉です
すんなりとは行かない事は最初から解っていました

そういう訳で 削っている様子の写真はありません

仕上がった「霧島杉」

阿保撮影 「あー 疲れた 帰ろう」


6月27日 「本当は。。。」

高田さんに 「春日局欅」をゆだね 昨日の続き「栃」の仕上げをしました
写真を撮らなかったので 仕上がりは会場で見てください

「霧島杉」の仕上げに入る

耕木杜の 若手に削らせた 粗仕上げの状態


これも まず 逆目は絶対出さないようにしながら 高い所を確実に削って
平面の精度を上げていく も作さんの3寸6分 1枚鉋

高田さん 飛行機の時間が迫る

高田さん 銘木削りの2日目 きっともっと時間があれば もっと追い込めたのに
口には出さぬとも 高田さんの気持ちの中にこんな思いがあったと思う
職人なら 大変なのは承知でも 自分の限界を決めず 納得いくまでとことんやりたいと思うな筈だ

いやな話だが 年齢を重ね 気力 耐力 技能のピークが過ぎる時は誰にでもやってくる
でも 職人の本能として この気持ちは生涯変わらない

「削ろう会」でも 職人としての大先輩が沢山おられる
年を重ねて  現役を引退されている方も多いが 若い自分に とことん突き詰めて
やってこられた人とそうでもない人との言葉の持つ力はまったく違う
職人の道を自分の人生と決め やり遂げられた人は 言葉数は少ないが
どこかで見たり聞いたりした言葉でなく すべて自分の経験からでてくる
自分のような若輩者が言うのはおこがましいが 自分と同じ疑問を持ち 同じ考えで解決していたりすると
心の中でそうだそうだとうなずいて 嬉しくなる
現場で真剣にやっていなければ出て来ない言葉が沢山あると思う


本当は
遠くから 時間を裂いてきてくれた高田さん 川原さん有難うございました
ただ 本当に見て欲しかったのは 若い職人の人達
ボランテイア募集の時に 特にこの事は書かなかったけれど
手道具を使って 魂を込めて仕上げた物が いかに人の心に響くのか
大工と言うのは 意識を持って頑張れば 大きなやりがいのある職業だと言うことに
気がついてほしいのです 若い職人さん達の置かれている環境は貧しいです
自分の打った釘1本 自分が手がけた建物が そこに住む人を幸せにできる事 
あるいは 知らず知らず 不幸にしてしまう可能性もあるのです

恩着せがましく 言うのは苦手です 実は 今回の銘木削りを直接見ることが
仕事としてお金にならぬとも 時間を裂いてでも 自分の将来の役に経つと
直感的に 感じる若い人と係わる機会にしたいと思っていました

「削ろう会」で多くの人が自分の使ってる鉋や 引いてる姿や 聞かれて喋ってる言葉を
聞いています これは一方的な情報です
基本は同じであっても 自分は特に分けてる積もりはありませんが うす削りと 現場の削りには
取り組み方はおのずと違うのです
多くの若い職人さんたちが 自分の置かれている環境を 時代や社会のせいにして
「削ろう会」に気休めや楽しみの為にきている現実があると思います
ある意味諦めてもいる しかしその中にも機会があれば伸びる素質を持った若者もいるはず
理屈で納得させても駄目で 魂に響き 腑に落ちる経験を持たせてあげたい

いくらか 鉋削りに関しては 人よりは 実践が多い分 正しいことを伝えられると思っている
それを足がかりに 自分の家つくり 物作りに対する取り組み方も伝えていけたらと思います
今回のボランテイアの募集はホームページの他には 特に声をかけませんでしたが
若い職人さんからの反響は 期待ほど ありませんでした


自分もまだまだ現場に全力を掛けていくのが努めです
一生懸命学びたいのなら やはり現場でないと駄目です
今回のような機会が又あれば 時間が許せば 多くの若い職人の人達に
伝えたいと思っています


6月26日「栃 板目のはずが。。。。」

九州福岡から 高田さんがお弟子さんと二人で上京 
前日は保管庫から3分のビジネスホテルに泊まって
今日と 明日と鉋削りをする予定です 遠くから来ていただいて恐縮です
すでに準備万端の高田さんは ねじりハチマキで勇ましい 暑さをもろともせず気合が入っている

高田さんは 竹中大工道具館ともかかわりがあるそうです
耕木杜の掲示板では 【奥さんが】きれいだと紹介した例の高田さんです
先日行われた「削ろう会」の犬山大会で話をした時も 高田さんが「じゃけんのう」と柔らかくおおらかに
九州なまりで話されるのが自分には快かった 人柄もよく 同じ年でもあり 
意外と人見知りをする自分としては 気兼ねなく話せて楽しかったです


高田氏に「春日局欅」の鉋削りを命ずる
任務遂行の為 検討を祈る

高田さん 大工の長い経験から もちろん欅は数多く削られてきただろうと思う
春日局が植えたとされるこの欅 樹齢何年で 切られてからどのくらい経っているのかは
定かではないが この保管庫に保管されてからもすでに45年以上は経っているのは明らかだ
この枯れた 大きな欅を削るのに どんな作戦を立てているのだろうか


これだけ長い材料になると 一見平らそうに見えても
端から端の高低差やねじれは かなりあります
保管庫 並び国土交通省の方々 大変申し訳ありません 結構 削ってしまいました
しかし すでに乾燥が進んでいるこの木でも 電気鉋をかけた後も ねじれが少し出ました

電気鉋では当然出せない 平面の精度を粗し上げできっちりと出し 
仕上げ鉋を載せられるまでの状態にしなければならない
高田さんの任務は重要

粗し上げ 経験豊富な高田さんでも 厳しく自分を追い込んでいかなければならない
気の抜けない作業である ここで上手く行かないと 後がどんなに大変かも
身に染みてわかっているはずである
とても気楽に声は掛けられない 雰囲気


定規を当てながら 少しずつ 確実に高い所を削っていく
逆目は許されないぞ 高田。。。。。。 なんて

「仕上げ鉋をどの程度の平面の精度でのせるのか」
ここですでに どの位の仕上げの精度の高さを想定しているか

削る人の仕上げに対する執念がさらけ出されてしまう

この地道で 感と技術と理論が要求される苦しい作業に どこまで自分を追い込んでいけるか 
自分も泣きたくなる時があります

「栃」を仕上げる

「栃」   宮崎の関谷さん 岡山の杉本さんらが 削っててくれた「栃」です
栃は写真でも解るように目がもんでいて 板目の筈が 30%近くは 同じ面に
小口が点在していると言う状況


同じ面で削り方向が違う事はよくある事だし 節があるのも
当たり前 しかしこれほど小口があると 。。。。。 


刃の痛みが激しい 日曜日に仕込終えた 「も作」さんの刃幅3寸6分 一枚鉋


仕上げの段階になれば 数ミクロン単位の鉋屑を出しながら 平面の精度と艶を更に
追求していかなければならない 砥いでは削り 砥いでは削り この地道な作業を
面を 荒らさないように 細心の注意を払いながら 進める
本当に自分の想定している所まで仕上げられるのか

ごまかしは許されない
思っていたより 厳しい状態 時間切れ 明日に持ち越し


竹中大工道具館 坂本氏

竹中大工道具館の企画展の担当者 坂本さんが やって来た
ホームページや ポスターの製作 企画展に係わる 沢山の人とのパイプ役
打ち合わせなど 沢山の仕事を抱えておられる ご苦労様です


写真撮影 木の変更も多少あったので 現状を確認している

仕上がった銘木の養生のシートをめくりながら 熱心写真を撮られていた

坂本さん その姿を撮られていたのに気がついていましたか

追加 企画展の神戸展では会場の都合で 今回削った「春日局欅」は大きすぎて
展示できません 神戸展用に長さ2m程の 「春日局欅」を追加で削る事になりました

川原さん 高田さんのお弟子さんの川原さん

今日はボランテイアの子が休みだったので 掃除をしてくれました
有難うございました 又あしたね


6月23日 「春日局 欅」いよいよ登場

「春日局欅」   小さな欅が仕上がったところで いよいよ「春日局欅」に電気鉋をかける
大きいし 電気鉋の鉋屑がかなり出るので 一緒に鉋削りは無理なので
関谷さん杉本さんには 補助をしてもらう  全員マスク

目を荒らさぬよう 平面を出していく

外周の高さをきめ それを基準に中も進めていく


役割分担


欅らしい 綺麗な目が出てきた


関谷さん 夕方までの 時間を欅と過ごす


追加 以前から 耕木杜の勉強会にも来ていた千葉の大工さんが千葉から 見学に来る
話は 道具の事ばかり


栃の仕上げに入る


楽しい時間  があっという間に過ぎてしまいました
関谷さん 杉本さん ご苦労様でした 気をつけて帰ってください
掃除をして 3週目は終わり にぎやかだった一週間でした


6月22日「欅」

杉本さん 2日目 削りに集中してきた
宮崎の関谷さん 3日目 どんどん鉋削りにのめりこんでいく
住宅建築のそれも元請で会社を長年営んできた間には 人に言われぬ苦労も
沢山あったと思う ただ大工として物と向き合っていられたら どれだけ良いだろうか
耕木杜を立ち上げてから 毎日思うことだ

下請けはやらず元請にこだわって住宅建築をしている事に後悔は無い
いい建主さんとの出会い 全部の責任を負いながらも 家全体の構想を
きめて作っていけるのは それまでのただの大工ではこだわれなかった
構造 素材 意匠 全部自分に任せてもらえたら こうすればもっと
よくなるのにと 思いながら 立場としては 図面どおりにきっちり納める事を優先してきた
耕木杜を始めてからは 全部を自分の好きなように出来る機会はさすがに無いが
空間 素材をふくめ かなり自分の感性に基づいた「空間の調和」の実践に向って
少しずつ 実績を積んでこられたと思っている

技術を学びたい   と 多くの若者が来ました
縁あって 一緒に仕事をする者もありましたが それに至らない人もありました
1日で離れた人 一ヶ月で返した者 人の出入りはそれなりにありました
それまで ずっと ひとりで厳しく仕事をしてきたから 人を育てたいと思いながら
未熟な事が許せず 心が乱れ悩んだ時期が長くありました
今は過剰な期待はせず 現場に向う気持ちや 道具に対する心構え 対処の仕方
整理整頓 怪我をしない事などは厳しく教えています
後は 本人のやる気と才能です 過剰に期待しても本人が大変です
ただ 上手くなりたいと 実践していけば 解らない事がどんどんまた出てくる
自分も通った道だから そんな質問には自分なりの理屈や方法をどんどん教えます
かなり実践に役にたってると思います

「玉杢の欅」を仕上げる


「削ろう会」で見た人も多いと思うが 自分の鉋の台は比較的 薄く 長い
薄さの理由は 台が触れている 削ろうとしている板の表面の様子や 刃の様子を
自分の手のひらに敏感に感じたい為 刃を仕込むのである程度の厚みは必要だが
一般的な 厚さでは自分には厚すぎる
鉋の台の下端は削って調整していくから 最初から薄いのを嫌う傾向がある
でも 多く削っていけば 刃口は広くなり 仕上げの精度が上がってくれば 使えなくなる
今回の銘木鉋削りでもそれは立証されている
自分の場合は 台仕込みは億劫ではない 使いにくい状態で刃の性能が
発揮できないよりは 仕込み直した方が 道具として活躍出来るではないか
会場で自分の鉋を引いた事がある人ならこの感覚はわかると思う

だからよく言うが 台は自分で仕込む事 沢山練習して早く上手に仕込めるようになる事
樫の鉋台は探せば700円くらいからでも手に入る 自分で仕込めばただだし
鑿の使い方もうまくなる


台が長い理由 堅木の板剥ぎ 天板仕上げが多い耕木杜では 平面を綺麗に艶を出して
仕上げることも重要だが 平面をきちっと出せる事もかなり求められる
高い部分だけを 拾って削ってくれるる長台がとても有効なのである
今回の銘木ように 樹種にもよるが 木が枯れて来ると 僅か削りすぎると逆目が起きてしまう
最終の仕上げ段階に入れば 僅か高い所を削りながら まめに砥いで切らし 艶を出す
この取り組み方が 必要の様だ ただひたすら砥ぎ ただひたすら慎重に削るの 繰り返し
何とか仕上がった

関谷さんの取り組み


上手く削りたい 勝手に頭が回転し体が反応する
現場一筋の関谷さん さすがじっとしていない


杉本さん  力まず 体の力が上手に抜けている
目線と 物との距離感がいい 後必要なのは執念と追い込みか。。。


杉本さんの年齢は  関谷さんの役 半分大工経験は6分の1以下 
一つの材料に向って二人とも真剣勝負
こんな風に 先輩 後輩が一緒に仕事が出来る現場は 今の日本にどれくらいあるのだろうか


縁あって    3人で 一緒に銘木を削っています
「削ろう会」でやるうす削りは 現場とは違うし 自分も会場で結構言いたい放題言っているので
自分を色々いう人もいると思います
関谷さんも杉本さんも 「削ろう会」で知り合った方々です
自分は 常に鉋と言う道具の理屈を深く理解し 多方面から工夫して 実践しているから
銘木削りも うす削りも 取り組み方が一緒 結構期待以上に勉強になったと思う

今日も1日ご苦労様でした 
二人とも予定を変えて 明日もう1日 削るそうです


6月21日「山形杉」
宮崎の関谷さんは 2日目 昨日に引き続き「栃」に取り組んでもらう

それから岡山から 杉本さんが 新幹線で上京 質問攻め うーん
杉本さんが自分と最初に会ったのは「削ろう会」の岩国大会だということが解りました
岩国大会でも 少し言葉を交わした程度だそうです すみません憶えていません
その後も多分話しをした事はないような気がします
大学を卒業してから大工の道に入り7年目 住宅建築の会社で大工として修行中です
職人さんが現場の途中で平日に休みをとるのには かなりの理由がいる
遠い所時間を作って来てくれて 申し訳ない気分です

耕木杜のホームページは結構見ていてくれているらしいです
宮崎の関谷さんもですが 細かい所までよく見ていてくれてびっくりします
自分の方が自分のホームページにどこまで載せていたか憶えていません
しかし実際やっていることを見て 直接聞いてやってみて
ここにいる間に できるだけ沢山の事が 杉本さん のこれからに参考になれればと思います

今日はボランテイアの子が休みでした
自分を含め3人とも 砥いで削って話をするのに忙しく写真を撮るのは忘れました 
昨日の慌しさの疲れもありましたが 今日は同じ職人3人
道具や技術のことだけ 気兼ねなく わいわいと少し気が楽でした
質問攻めにあいながらも「山形杉」を仕上げました

削りが終わって     皆で作業場に返ってきました
耕木杜の小さな作業場と事務所 倉庫と現場とは又違う空間を楽しんでもらって
これまでの写真を見ながら 建築や空間 素材の話などで盛り上がる
一番盛り上がったのはやはり 「Rの家」「k邸」のRの構造の作り方
二人とも こんな構造は 話にも聞いた事がないと思う
既成観念捕らわれていたらこの発想は浮かばない
突き詰めていけば このやり方の悪い点を指摘する人もあるだろうが
あの時点では 最善の方法だったと自分なりには思っている

大工は修行の時に 親方から叩き込まれた技術を絶対と思い 守ることにこだわる
もちろん先代が長い間に確立してきた木造軸組工法は世界に誇れる文化だと思っている
しかし 自分のやっているやり方の理屈や長所短所をもっと探って 直面している今の場面で
もっと理にかなった方法がないか常に追求するのも 職人のあるべき姿のようなきがする
その結果 先代から伝えられた技術に工夫が加わり 精度も上がり 
さらに上の技術が 後世に伝承されているのが理想なのだと思う

建築家気取りの大して木のことを理解していない設計士が増え
技術や素材より 設備が家つくりのおおくを占めるようになった
未熟な図面と 消耗品の設備 大工はそれに合わせる事が仕事になり
現場で負う責任がどんどん小さくなった 何か問題が起こっても犯人は他にいるのだ
責任を感じ もっと良くするのにどうしようかと考えるより
早くそつなくこなす事が社会人として賢い事だと 職人も思うようになってしまった

木と向き合い 作り出す 末端で仕事をしている自分たちの意識が技術を向上させ 
良い物を伝承させるか 衰退させるか それを握っている 
これまでも 技術 才能にすぐれた無名の 名工が多くいたはずだ
今では想像すら出来ない高いレベルの技術やくふうが存在していたと思う

自分の建てた建物がずっと後に見た 自分を知らない人にも 新鮮な感動を与えられたら
なんて心の中でひそかに企んでいたりもする

6月20日(火) 「来客」

山形杉 今日は昨日粗仕上げをしてもらった山形杉を仕上げる予定。。。だった

宮崎から「削ろう会」で知り合った大工の関谷さんが来られた
飛行機で1時間30分 羽田からタクシーで30分
意外と九州は近い でも飛行機である 丁度時間が取れるから
削りに行きたいと耕木杜のHPの掲示板に書き込みがしてあった
「お手伝いがしたい 銘木を削ってみたい」と書いてあった
なんて正直な人だろう その行動力にも脱帽です

水戸から平治さんも 最近新潟の大工さんに頼まれて作った鉋を持ってきて
出来具合や 作っていての疑問に思っっている事など 話し合った
次の製作のよい参考になればと思います


とりあえず皆でお茶の時間となりました
毎日銘木をテーブル代わりにしてのお茶の時間  今日は栃
毎日朝引き立ての珈琲をポットに詰めて持って来ています

今回の鉋削りは忙しい合間をぬってスタッフに耕木杜のHPで作業日誌の形で
載せてもらっている 作業の進行が随時見られれば依頼された竹中大工道具館の方も
安心してくれるだろうし こんな貴重な機会を職人とは限らずに多くの人に見せたかったからです
これだけ沢山の銘木がこうして存在する事 それが竹中大工道具館の企画展で展示される事
仕上げられて行く工程 見学に来られた人達の事 包み隠さずです
自分の鉋削りの技術を信用して 任せてくれた 大工道具館の方々も このような貴重な
材料が どの様に扱われるのかは 貸し出してくれる機関に対しても気になるだろうし
神戸と東京では目が届かない 耕木杜のHPじょうで確認できるのでとても喜んでくれ
順調に作業が進んでいるので 安心して頂けた
作業が終わって作業場に着くのは大体6時30分から7時 それから写真を整理し 文章を考え
HPに無事載せるにはかなりの時間が必要だが 記録としても貴重だし 多くの人と
共有できるのはITならではだなと頑張って貰っている

これを掲載するようになって 耕木杜のHPのカウンターの増え方が随分多くなりました
自分はパソコンはいっさいやらないので 一日の作業内容や来客の様子を口頭で伝え
文章も含めまとめてもらっている
技術面では自分の感覚と違う表現があるだろうから 疑問があったら
掲示板とかメールで尋ねて貰いたい

平治さんには欅を 関谷さんとボランテイアの子には栃を 手鉋で 粗削りして貰う

玉杢が程よく出て 色合い 表情とも品格を漂わせる欅
「この木は難しいなー」と平治さん 「あのー平治さんは鍛治屋さんでしょ」
「削ろう会」のうす削りでも 大工が上手いとは限らないから。。。
大工はもっと頑張らなければなりません


切れ具合はいかがですか


年の差はいくつ 

関谷さんは自分と同じ 15歳で大工になったそうです
そして 23歳からはずっと棟梁として現在まで 腕一つで頑張ってきた
建築士の資格も持ち 頑張りやで誠実な仕事で地元で信用を築いてきた
土地を買い作業場を建て 家を建て 息子二人を育て上げ 息子さんたちはすでに結婚をして
独立したそうだ しかし 残念ながら跡取りはいない
最近キャドにはまっているらしいが 程ほどにしてください 目からの疲れは深いところに溜まります
ボランテイアの若い子と一緒に栃の粗削りをしてもらった 大先輩に申し訳ないが
今も何事にも全力でチャレンジする関谷さんだから 気持ちは若い頃と変わらないのかも
贅肉のついていない体と 無心に木に向う姿はとても若々しいです

栃の全貌

「いやー 毎日耕木杜のHPみとります 阿保さんの銘木鉋削りの日誌みとったら
行きとうなって 行きとうなって ははは。。。。」
いつも見てくれて有難うございます


竹中大工道具館 赤尾館長が来られる 銘木を削り始めてからは始めての訪問です
少し緊張します 予定の時間より早めに来られました
竹中大工道具館の館長職はこれまでは3^4年で交代だったそうですが 
赤尾館長はすでに5^6年目と伺いました
就任後 それまでの竹中大工道具館の整備し切れていなかった 沢山の道具のランク付け
それに見合った手入れ データーの整理などにも 精力的に力を入れられています
竹中工務店の創業者が職人として丁寧な仕事を大切にしながら発展してきた社風を
受け継いだ竹中大工道具館の今日の社会的な役割とあり方に対し
きちんとした理念を持って 活動されていのが言葉の端はしから感じられます


その後も赤尾館長と色んな話をしました
作業が終わった後 昨年竣工した竹中工務店東京本店へ行って 新社屋の近代的な機能や
設計に当たっての計算しつくされた工夫を説明していただきました
竹中工務店が日本の建築業界のTOPとしての責任とほこりを持ってこれまでの経験と
最先端の技術で設計施工に取り組んでいる覚悟が赤尾さんにも社屋にも感じられました


そそういう訳で 自分の今日の仕上げの予定だった山形杉は こんな状態で
タイムオーバーとなりました
この分は 明日頑張ります

赤尾館長 夕飯までご馳走になり 大変恐縮です
館長職以外でも 大変ご多忙のようですので くれぐれも体に気をつけて御活躍下さい
有難うございました

問題です    竹中工務店東京本店の入り口の前にあるオブジェはいったい
何を表しているのでしょうか 企画展に来て 是非当ててみてください
昨年も見ているのにまったくこの発想はしませんでした 目からうろこです


6月19日(月) 「栃 欅」

今日は 耕木杜の若手を2人連れてきた
仕上げた銘木とパネルを展示する時の支えの台の製作も依頼されている
材料は 保管庫で何かに使用した材料がまとまってあるので これを作業場に運ぶ段取り

折角連れてきたので 杉と欅の粗仕上げをさせる
ひとりは 大工育成塾の一期生として未経験で入った者 2年8ヶ月
耕木杜に入った当時から 楢のテーブルの天板などの堅木をさんざん削ってきた
大きな板の平面を削るのはある程度馴れているが
この杉を仕上げきるのはまだ無理だろう

もうひとりは 大工経験は6年目だが 耕木杜は昨年12月から
まだ 鉋削りの適切な追い込みは経験不足

二人とも 今回のような銘木を削る経験は 今後も多くはない筈だ
実際の経験として 自分の引き出しを少しでも増やす良い機会になるだろう
まず 目の前の木と真剣に取り組む


ボランテイアに来ているもっと若い彼は今 自分の進路を模索している
20代の前半の先輩達が進路を決め 迷いもなく 真剣に取り組んでいる
ただじっと釘付けになってその姿を見ている彼の心は どんな鼓動を打っているのか
その様子を愉快に見ている自分がいた

そんな訳で 粗削りは彼らに任せ 自分は残りの栃 欅を電気鉋で削る

欅は 細かい鉋屑が粉状になって舞い散る 
階段下の1階まで うっすらと床が欅色になっている程だ
この欅は玉杢が程よく出て 色合いもよく 面皮やこぶもあるのに
どうしても田舎くさい表情になりがちな欅にしては これは品格が漂っている
手鉋で仕上げると さらに端正さが加わって見ごたえのある板になるだろう


栃 変更した栃 これも ある程度の平面を出すまでに結構削らなければならなかった
削る分はなるべく最小限にしている積もりでも 銘木だから お金にすると
どの位削っちゃったかなと金額が頭をよぎる 何万 何十万。。。。。




長い間 黒く封印されていた 栃本来の白い表情が現れて来ました

も作さんの刃幅 3寸6分の鉋を    仕込み直始めた
屋久杉をかけていた時に刃口が広く 思うように進めることができなかった
も作さんの刃幅3寸6分の鉋の台を昨日から仕込み始めた
道具が思うように働かないのはやはり 気にいらないのだ
土曜日外構を頼まれている片道1時間15分くらいの現場の 石積みをし
かなり疲れていたにも係わらず 結局日曜日は この台を仕込み始めた
その続きを昼休みにやる
早く使える状態にしたい 作業場に帰ってからも 少し進めた



6月16日(金) 「屋久杉・・・・・」
銘木保管庫  人間が小さく見えます


砥ぎ場 大活躍 今日から杉 砥ぐ時間がいっそう長くなるだろう
準備してよかった流し台


昨日 屋久杉と一緒に電気鉋を掛けた杉

霧島杉 いい道具置き場になってます  右は 山形杉 笹杢


屋久杉を削る


も作の刃幅3寸5分の鉋 スエーデン鋼
これを選んだ訳は 平面の精度を上げる為
幅の広い鉋でいっぺんに削れる面積を増やしたいからだ
杉は柔らかい上に この屋久杉は枯れていて前面艶を出すのは難しい
艶を足す為に僅かでも刃を出しすぎれば 逆目が起きてしまう


残念ながら も作さんのこの鉋は仕込んでから時間がたっているので
刃口が 大きくなっていて 逆目を起こさないように
切らしていくのには 限界が見えてしまった

この鉋ではいくら調整しても 自分の思い描くような平面の精度と艶を両方求めるのは
無理 どうすれば良いだろうか どちらかを優先させなければならないだろうか

まず 高い所だけを確実に削り取って平面の精度を上げる もう目で確認できる範囲は超えていて 
定規を当てて確認しながら 僅かずつ確実に削り取っていく


かなり平面の精度は上がってきたがやはり艶は出て来ない
ここで先日平治さんに銘木鉋削り用に作ってもらった鉋を使う
仕込んだばかりなので 刃口がまだ最小限に小さい 本来2枚刃で仕込んであるが
裏座を外し 1枚刃として使う 


満足のいく程ではないが 艶が出てきた
ほんの数ミクロンずつ高い部分だけを削いでいく すでに繋がった鉋屑は出て来ない
これを 少し引いては砥ぎ 少し引いては砥ぎを 数時間繰り返す
仕上げは 「あいわだに」のこっぱを使った


枯れた 屋久杉 もっと違う方策があったのか

展示された時 職人たちの目はどう評価を下すのだろうか


今朝は雨による事故渋滞があちこちであり 高速をおりたので 作業は朝9時30分位から
3時の休憩までで 何とかここまで 

休憩後 霧島杉を4時30分までざっと鉋で粗削りをし
丁寧な掃除をして今週も終わりました
すこぶる 順調順調 

今回の鉋削りをホームページで紹介してから 耕木杜のHPの毎日のカウンター数が増えている 
結構見ている人がいるんだ きっと知らない所で評価されているのだろう
写真は全部写ってしまうから 色々参考にもなると思います

栃の木 削る材を変更しました

前に選んだ栃(とち)はごろんとしていて 表面にニスが塗られていて ずっと気にいらなかった
毎日保管庫にいて 見渡し やはり変更したいと思った
竹中大工道具館の担当の人が急きょ様子を見に来られたので 了解を貰いました
この木なら 銘木らしい 貫禄のある表情を見せてくれています

竹中大工道具館の  HPでも企画展の紹介の準備が進んでいるようです
期間中は職業 年齢問わず 是非多くの人に見てもらいたいと思っています


6月15日(木)「黒松 杉3枚」
昨日からかかった黒松を仕上げました 脂松は黒松です これもいい脂松です

気合をいれて


良い艶が出てきました


仕上がりです

杉3枚電気鉋 屋久杉 山形杉 霧島杉

これから杉を3枚仕上げていきます
手鉋をよく使う人なら身に染みていると思う 杉を綺麗に仕上げるのは難しい 
目が入り組み冬目夏目性質の違う所が渾然としている 1枚の板の面のなかで 様子が極端に違う
逆目 早い切れどまり どれくらいで仕上げられるか 本当に綺麗に仕上がるのか 読めない木である  
平面の高い精度と抜群の艶 どこまで追い込んでいけるだろうか
あせらず じっくり 取り組んでいくしかない 

仕事の質にもいろいろある 内容にあわせて頭と体と気持ちを切りかえる
大工の仕事も 剛と靜の両方を持ち合わせていないと 
最近のインパクトと電動鋸と替刃式の道具で間に合っているパワーだけの仕事は大工の仕事とは程遠い

屋久杉


昨日仕上げた 栗と黒松


先日仕上げた 脂松と  きはだ




6月14日(水)「栗 黒松」
今日は 千葉から介護施設を10数年前から経営している30代後半の男性が
ボランテイアに協力してくれました
20代からすでに 経営者として独立し 難しい介護の業界で10年以上の実績を持つ
先生は人格と 医者は命と向き合う人生を掛けてでないとまっとう出来ない仕事です
それから人の人生をささえる家を建てる建築も自分は同じ聖職だと思っている

それから 現代では介護 ホスピスなど 障害や老いを迎えた人達が
人として人らしく生きていく為に どうしたら良いのか おおきな課題となっている

人と向き合うのが一番難しい どうやれば良いのか単純には答えは見つからない

この男性は この難しい介護の業界で実績も挙げ 失敗しているわけでもないが
若い人にゆだね 自分は物を作る方向に行きたいと言う

多くの人が 若い時 目標に向ってがむしゃらな時間を送る 
そこには自分の中の満足感や 社会から認められたい欲望の為に突き進んでいく
これがひと段落するのが30代後半 社会的立場も確立し 社会とのすりあわせを覚え
随分と偉く 大人になった気がするのです ところがそんな時ふっと 自分がしている事が
本当に間違いなかったか ただの自分勝手な事ではなかったか 
これからもこれで良いのかと 時々遠くを見つめている自分を見つけてしまう


自分を振り返れば 若い頃は 大工をやりながら 盆栽 陶芸も真剣に取り組んだ
盆栽は ぶなの原生林のふもとで育ち 大工で木と向き合うことが多かったので
木を深く理解したいと思ったことがきっかけだった 
木がどんな条件でどのように育つのか何で形成されているのか 
切られた枝はどうなるのか 木の本来の自然の姿とは沢山の事を教わった 
その盆栽達にふさわしい鉢を探しているうちに 自分で作らないと 満足する物がない事に気づき 
陶芸をはじめ 普遍的な形がどういう物か 毎日考えた 
これらを真剣に取り組む事は 自分の建築の空間感や素材感のこやしになった

この頃は大工の仕事は言われた事以上に綺麗に早くできる自信もあったし
自分より上手い職人にも会ったことがなかったから 仕事は充分にこなし余裕もあった
自分は何でも出来ると思っていた

ふとこれで良いのかと思ったのがやはり30代半ばだったと思う
新建材が 便利 綺麗と重宝がられ 現場は電動工具と新建材だらけになった
大工も無垢の木を扱うのは気も使うし手間もかかる それなのに儲からないから
どんどん新建材で早くばたばたと組み立てる方へ流さていってしまった
自分はそんな方向へは進みたくない このままいったら 自分の体と心はぼろぼろになる
時代に逆らって 手仕事にこだわったので バブルの繁栄は自分とは無縁だったが
お陰で今の自分があり 自分を必要としてくれる人達と出会えた

物を作る時は 綺麗な心で取り組む様に心掛けている
変な先入観や 心が乱れる事があると 感じる心が鈍ってしまうからだ
素材を理解しなければ 素材を活かすことは出来ない
既製品を組み立てるのではなく 何も無いところから発想し作り出す事
感性や 直感を大切にしている
会社を起こしてからは 純粋に向き合う時間を作る事が本当に難しくなった
ボランテイアにきてくれた男性も 素の自分と 純粋に向き合いたい
そんな思いが こみ上げているのかも知れない

思いは 人には止められないが 自分の中に何が潜んでいるのかもう一度よく考るべき
これまで多くの人を見てきたが 人間の本質は そんなに簡単には変わらない

余計な事を書きました
今日は栗を仕上げました それから黒松を半分仕上げました


今日はボランテイアが二人 屋久杉 山形杉 霧島杉と欅と栃の掃除をして貰いました


6月13日(火) きはだ
今日は埼玉から建築を勉強している青年がボランテイアに来てくれました
某有名大学を卒業し某ハウスメーカーで現場監督として数年勤務し 
有資格者(2級建築士)で事務所登録もしています 数年前自分とも知り合いの大工さんに
つれられて耕木杜の勉強会に来たのが彼とのつきあいの始まりです

それなりに仕事に対して満足感も持っていましたが勤務する会社の建築のあり方に
疑問を持ち しばらくして会社をやめ アルバイトをしながら一級建築士の資格試験と
設計の勉強をしています 耕木杜でも 建築確認申請などの手続きをして貰っています

昨日は写真を取れなかったので 記録写真の撮影をして貰いました

脂松


当初削る予定だった物から 別の脂松に変更しました
保管庫の中には迎賓館の改装の際に使われた脂松と同じ木など
このクラスの銘木が 数多く無造作に立てかけられています
ここに来てからも 数十年時間が経ち 表面は黒くなっていますが
鉋で削ると 見事な「玉杢」が現れました
今回の機会がなかったら こんな材料と向き合う時間など 生涯ありえなかった事は間違いありません

きはだ

保管庫の雰囲気に慣れてきて 木の大きさ 貴重さに驚かなくなっている自分がいます
しかし きはだの上品な黒は木自身の色でびっくりです
今日はこれとの濃い付き合いです

電気鉋で削った後 昨日手鉋で粗仕上げをしてもらった状態


ほんの手始め


自分が削ったところは艶が出ているのが解ると思う
仕上げの精度を上げる為に 平面の精度を確認ししながら作業を進める


数時間 かなり全体に仕上がってきた



これでどうだ


この辺が。。。。。


もう少し


やはり仕上げ精度を上げるのには時間と気力が欲しいです
自分が本格的に仕上げる前に ある程度削って貰っていたので助かりました
ご苦労様でした

竹中工務店のCM撮影の 監督さんが見に来られました
お貸しする撮影用の鉋を渡し 鉋削りのデモンストレーション(桧指名)を見せる
20年世代を超えた沢山の視線に耐えられるいいCMにしてください
「自分の鉋が20年も皆に見られるのか 平治さんも同じ事少しは考えたかな 」
ニヤニヤ帰りの車の中でそんな事を頭の中で考えながら千葉に着きました

明日も一日鉋削りです 栗を仕上げます まだまだ続きます

「ねー阿保さんそれなんて言う砥石ですか」「うん これはね。。。」そんな会話が聞こえそう


写真撮影 植松敦史君 ご苦労様でした


6月12日(月)脂松との戦い
脂松は 今回の削る銘木の中で2番目に大変だと想定していた
仕上げの最終段階になれば 刃を研いでから何回引けるだろうか
急遽 現場に流しを持ち込む 鉋 鑿 の仕事が多い耕木杜では作業場でも
刃物は流しで立って研いでいる 体が楽なのもだが 砥ぐ時の刃先に
伝わる力が加減しやすい所も気に入っている
かがんで砥ぐと体重と力がかかりすぎて 微妙な加減が難しいと思う時があった


業務用のステンレスの流しでこの船形の中古は見かけなくなってしまった
リサイクル屋で使っていたのを無理を言って譲って貰いました
結構錆びていたので磨きました
砥ぎ台の高さは自分は75cmくらいが気にいっています

今日は朝から平治さんが来てくれました
今回の鉋削りに使っている鉋は平治さんのだけです
平治さんが鉋を作り初めてその度に 使い手としての評価をしてきました
材料 形 火入れ具合から 砥ぎ味まで 随分と注文をつけて
がんばって貰いました 今回は銘木鉋削り用に一丁改めて打って貰いました


先週電気鉋である程度の平面を出しておいたきはだを ボランテイアの子と一緒に
自分の打った鉋で粗仕上げをして貰いました

きはだ という木を削る事もかなり貴重な経験だと思いますが
自分の鉋で研いでは削り砥いでは削り 今後の鉋つくりの参考になったでしょうか
ただ 木と道具と向き合うことで 自分の感覚の中に文字には表せないデーターが
一杯詰まった事と思います 更なる発展に期待します

翌日 平治さんから 又行きますとメールが届きました
脂松と格闘している写真を送ってくれました


中屋平治撮影   有難うございました


6月9日(金) 電気鉋三昧
今日は大きな材料数枚に電気鉋掛ける作業と
土日が休みになるので丁寧に掃除をする予定
ひたすら電気鉋の鉋屑と埃との戦いとなる
昨日見学に来た彼は自分が着く前にすでに来ていた
じっと真剣な目で自分の仕事を見ている 本当に大工になりたいと思っているのか 

黒松 栗 きはだ 脂松 の 電気鉋掛けをする


黒松





きはだ
木目は欅に似ているが 色が銀黒のようだ


脂松
2番目に大きな材 木目の様子から 同じ脂松でも違う板に変更する
ねじれがかなりあるが 最小限で抑えたい



今週は初日の段取りや打ち合わせなど神経の使うことが多かったので
正直疲れました 来週前半は今日電気鉋を掛けた4枚の仕上げに集中です
掃除機で丁寧に掃除をして 今週は終わりです


6月8日(木) 4日目 来客ばかり

今日はひとり 昨日電気鉋を掛けたけんぽなし 楓を仕上げる予定
銘木保管庫の2階は 空調設備があり 排煙窓もある
電気鉋で舞った鉋くずがすべて吸いだせる訳ではないが 想定していたよりは
換気は良かった しかし天井が高い為 手元の明かるさが足りない
刃を砥いだ状態が良く見えない ルーペが必要だ

竹中工務店コマーシャル
今 竹中工務店がCMを企画中 その中に鉋を引くシーンが出てくるらしい
それに使用する鉋を貸す事と 鉋の引き方などの指導を頼まれた
東京本店のCM製作担当者が 保管庫に視察に来た
竹中工務店東京本社と銘木保管庫は近い
竹中工務店のCMを見た事あっただろうか ピントこない 竹中工務店は神戸が本拠地なので
関東で放映されていないかも知れない 担当者によると今回のCMはこれから20年使える
CMにするため 力をいれているそうで その1シーンに自分の鉋が出る事になるのだな
担当者の人は同じ竹中工務店でも現場へは行かないだろうし 鉋を削る場面を見る事も
多分ないのだろう 随分興味深く見て行かれた

ボランテイア
今回の鉋削りで募集したボランテイアは正直ほんの数人しか集まらなかった
あまり大規模に募集した訳ではないし 皆 平日休むのはやはり難しいのだ
是非見に行くと言ってくれた方々はいたが とても掃除を気軽に頼めない面々
初日と3日目は木材の移動や打ち合わせがあったので耕木杜のスタッフを
つれてきたが ずっとという訳にも行かず正直困っていた
意外な所から 若いボランテイア志望者があらわれた
彼なりの理由で学校には脚が向かないらしい
その子を小さい時から知っている人が
たまたま自分の知り合いと最近知り合い 耕木杜を知りHPを見て見学に来た
どうして学校に行かないのか これから何をしたいのか色々話をした

その子は確かな技術を見につけて 自信のもてる仕事がしたいとしっかりとした
人生設計を持っていた
彼には今の大人の世界はどう写っているのだろうか

9時から5時までしか作業が出来ないのに 今日は他の事に時間を随分とられてしまったが
予定の2枚を何とか仕上げて4日目終了です


番外編 鉋仕込み
今回の銘木鉋削りの為にうって貰った鉋を 昼休みに急いで台に仕込む
この鉋は削りが終わったら 竹中大工道具館に寄贈する事になっている



番外編  砥ぎ

保管庫の2階の隅で砥いでます 水道が1階しかないのでちょっと大変です



6月7日(水) 3日目
昨日 仕上げ切れなかった 水芽を削る
こんなに年数が経っていても 昨日の帰りから 今朝までの間にも木は動いていた

水芽は 密度が均一で粘りがあり 引きも重い
欅程ではないが 硬く こまめに刃を砥ぎ 仕上げの精度を上げるのに
思ったよりも時間がかかった


今回削る材料のうち 比較的小振りのけんぽなし かえで いちょうを電気鉋で削る


けんぽなし





いちょう

いちょうを仕上げる 
いちょう 表面から3mm程度焼けが入っていて 変色していた為
いちょう本来の木肌が出るまで 電気鉋で削り 仕上げに入る
この木は自分がこれまでいちょうに持っていた印象とは違い 目が良く詰まり閉まっていて
硬かったが 今回削る木の中では比較的削りやすい木だった


塩地
塩地は一枚板と 7枚の薄い板に挽いた物と2種類あり
薄板は一枚を手鉋で残りは葺き掃除をして養生した
塩地は欅程ではないが けんぽなしよりは硬かった


右から 塩地一枚板 水芽 塩地薄板
仕上がった材は透明のビニールで養生するしておく

今日も無事終わりました


6月6日(火) 2日目です
鉋削りの2日目は 昨日始めた 青森ヒバの仕上げから
比較的平面が出ていそうだったので 直に手鉋をのせて見たが 
やはり下地の精度をかなり 上げておかないと 手鉋で仕上るのに時間がかかってしまう
2階には水道設備がないが 一々下に下りていては 効率が悪すぎる
無駄に耐力も使うので バケツを数個余計に用意して 2階の隅に砥ぎ場を設定
最後の仕上げになれば 木は古く硬化しているので まめに砥がないと
思ったような艶が出てこない その木らしい木目を見せたい為 木裏を仕上る物も何点かある
まず比較的小振りの材からピッチを上げて取り掛かる
2日目は 青森ヒバし仕上げ 水芽 塩地(厚板)の電気鉋 
塩地(厚板)塩地(薄板)仕上げ 
水芽はもう少しで頑張ると仕上がったが 職員の人が戸締りに来てしまった
本当に5時過ぎると出来ないらしい
この日は来客もなく ひとりだったので 写真は撮れなかったです

削った木の印象から
青森ヒバ この木は備州よりやや油分があり 硬化はしているものの引きが軽い
ミクロン単位の鉋削りも可能
塩地 一般的な欅程ではないが粘りがある様に思った


6月5日(月) 銘木鉋削り初日

銘木保管庫

銘木保管庫は2階建ての大きな倉庫で(財)日本住宅 木材技術センター試験研究所の
敷地内にあります ここの2階で作業します
本館では連日 建材メーカーや 設計家による 強度実験が行われています
耐震強度が騒がれている昨今 こういったデーターは欠かせない物になりました
組まれた材料や 面材をじっくりと 押したり引っ張ったり 破壊実験をしています
又別の棟では 燃焼実験も行われているようです


一変して保管庫の方は普段は殆ど来客もなく 保管されている材料もかなり古いので
かなり埃っぽい状態 2階は開口も少なく換気も悪そう
埃 と暑さ と電気鉋の鉋屑の対処を良く考えて 工夫をしていかないと体が持ちそうにない
今日は 初日なので 作業場所の整備とこれからの作業の段取りを探っていく
神戸の竹中大工道具館の担当の人と 展示する銘木の運搬を担当する業者さんと打ち合わせ 
今回の企画展の展示のメインの「長蔵杉」の運搬はかなりの難問の様子だ
運搬面からも検討して 展示ずる材が確定した 
結果手鉋で仕上るのは上記表のとおり17点だがこれは東京展の分 神戸展では会場の都合から 一部差し替えの可能性があるらしい


仕上げる木が決まったので これを桟積にしながら一箇所にまとめて置きたいところだが
それぞれが人の自由になる大きさではなく たて掛けてあるので 周りの銘木にぶつけない様に細心の注意をはらう 2.8t対応のホイストが配備されているこれを使って 慎重に行う



「春日局欅」
長さが4.74m 保管庫の端に立てかけてありました まず横にしなければなりませんが
ホイスト自身より背は高く かなり危険  木がどう動くか 自重が重いので
制御不能です 少しずつ様子を見ながら時間をかけての作業となりました

すべての移動が終わったのは 3時をすでに廻っていました
一枚一枚移動しながら 手鉋で仕上る面を決め 番号を貼り直し何とか整理がつきました


銘木保管庫は国土交通省の施設なので月曜日から金曜日の9時から5時までしか作業は出来ません 
木材の移動後は 比較的削りやすい青森ヒバをざっと削って 本日は終わりです