「老後を考えて」 終の暮らし


[老後とは」

人生50年 いつしか80年 日本人の寿命は画期的に伸びました
いつの時からを老後と呼ぶのか 社会に出て 世の中の発展のために働き
次の世代を育て 人としての役割を果たしたかなと感じたら
その後は自分の為に 時間を過ごす 自分らしい暮らしを自分の速度で
若い時のようにパワーやスピードはない
大きさより質のよさを求める 自分を見つめ自分らしさを確立していく時間

老後をご夫婦で豊かに暮らしたいと家を建て替える もしくは移り住む人が増えています
今の家は以前より格段に暖かく 便利になりました 住環境もそんなお年寄りを支える機能が
随分整ってきた 以前であれば 家を管理したり 急な病気の時など考えると お年寄りだけで
暮らす事は無謀でした

今は戦士としての役割を終えてからも 社会参加の道も幅が広がっている

健康である今 いずれ来る老後 介護 人生の夕暮れをどう豊かに自分らしく暮らせるか
家の役割も重要です よく言われる「終の住処」についてかんがえてみます

老後に備えて 建て替え 家移り リフォームを考える時
自分の目はどんな風景を求めるでしょうか
人間は視覚の生き物 物事を判断する量は目からの情報が圧倒的に多いです

まずともに暮らす妻や夫とどんな視線を交わすのでしょうか

向き合っている事が多いですか それとも並んで同じ景色を眺めますか
これから二人で共有していく時間や思い出の捉え方で暮らし方は変わってきます

お勧めしたいのは ともに並び同じ方向を見る事です 時には相手の視線(気持ち)になって
これが思いやりとなり 理解となります

やがてどちらかが介護が必要となる時がくるでしょう
とたんに介護する人 される人に区別されてしまう やってもらう人とやってあげる人
年をとればいずれ体に不自由が出てくるのは当たり前
おたがいの気持ちや視線は変わらずにありたい

家の機能として便利なものとして 事前に考えておいた方が良い事はいくらかあります
そしてもっと適した対応となればケースバイケースなので
なってから医療の面も考えて専門の人に具体的に相談するのが良いと思います

ここで伝えたいのは機能面ではなく その家が気持ちがいいか 五感を刺激するものなのか
そういうところです

若い時のようにパワーやスピード 気力 はありません
だから自分の五感に響くような 本来の自分にそった家作りが大切なのです

いくつか項目としてあげておきます
まり大きな空間は負担が大きい (管理 維持)
2 好きな事が出来る場所を大切に (家に居るのがあきてしまうのでは問題)
長く連れ添ったご夫婦でも好みはそれぞれ お互いがくつろげる空間がある事
3 二人で眺められる空間を持ちましょう
話す事が無くても時間や空気を共有する事で理解が深まります 

どちらかが介護が必要になって 外に出られなくなった時有効です
家族の方と家の中で共有できる物を持っている事が後々大事だとおもいます
4 やはりぬくもりのある素材を選ぶ事
無垢の木 塗り壁 自然素材のものは暖かい 人と近い気がします
5 冷暖房の考え方
極端に寒いところを作らないのが基本です 特に夜 トイレに起きる時など
寝室と廊下 トイレの温度差には気をつけたい
しかしいつも同じ室温では感覚が鈍くなり 生き物としての基礎的能力も落ちてしまいます
設備に頼らず 窓を開けたり 着る物で工夫したり 気持ちよく暮らせるよう頭を積極的に
使い 実行する事が一番大事だと思います
6 物は増やさない 収納の基本
何処に何をしまったのか 忘れやすくなりますから 収納は目的別に大雑把にくくる事
7 高いところに収納はおかない 
台を使わずともとれる範囲で済ませる工夫をしましょう
8 水道の蛇口 ドア 引き戸の取ってなど工夫する
力が弱くなり 開け閉めが大変になります 高齢者向けの商品が沢山あります
機能面では言えば たとえば コンロだとガスにするかIHヒーター方式にするか 浴槽の高さや
手すりの位置 バリアフリーのやり方 その人に合わせ考えて行く必要があります

今ちょうど 定年を目前に控え 自分たちのこれからを真剣に考えている
二組のご夫婦とプランニングを重ねています

基本的な考え方はあると思いますが こうだからこうだとこちらから決めることはありません
これまで生活してきて 知恵も好みもはっきりしている世代の方々ですから いろいろご提案して
全体のバランスを見ながら選んでいきます 後はご夫婦で話し合って決めて頂いて

次に軽井沢に建てる家の建てぬしのご夫婦の言葉です
6年越しで土地を探し 他で一生懸命に家作りに取り組んでこられました

「これから年を取っていくのに便利なものと機能ばかりが目につきました
床暖房に収納セット 食洗機にソーラーパネル 予算に限りもあるし 考えていました
そして優先順位は設備ではなく 無垢の床でぬくもりのある空間 なのだという事に
あらためて気がつきました
自分の中で求めていたはずなのになかなか行き着かなかった
いくらショールームに出かけてもしっくりこなかったのはそのせいだったのかもしれない」

家作りは始めたものの設計士さんとのやり取りが思うように行かず困っていたそうで
新しい家にストーブを入れるのに相談していた軽井沢のストーブやさん あの「軽井沢ストーブ」です

今は先代が亡くなり後継者の村山氏が「鐵音工房・くろがねこうぼう」と名を変え
ストーブ作りの精神を引き継いでいます
村山氏とは依然からの知り合い 相談に乗ってくださいと電話をもらったのは 7月の頭
建て主さんの都合もあり9月下旬には上棟を迎える

2度目の打ち合わせの時200年耕木杜設立の時に建てた「杜の家・粟生野」をとりあえず
見てくださいとお連れした時
「気持ちのいい家というのはこういうことなのか」
そんな言葉をいただきました

「杜の家・粟生野」は限られた予算の中でどこまで空間を作れるか 素材を使えるか
頑張ったところです 実際窓はアルミサッシですし何とか少し予算を加えてもらい内壁を漆喰で
塗る事が出来ました 窓の取り方 高さ 壁の収まり それぞれの広さ 配置 
けして素材の上等な物はありません
しかしこの場所だから この窓 ここからみんなで月を見よう そんな時間の共有が
出来るようにも考えてあります 月を一緒に眺める事で心も同じ方向を向く
五感に響くものがここにはあると思います


まとめ

何より気持ちがいい空間である事 心が響きあう要素がある事
その人の暮らしが映って居る事
どんな世代の人が暮らすにしても 機能も大切ですが 一番大事なのはこの事
ましてこれから老後を向かえ人生の終盤をそこですごすのなら尚更です
まず誰とどう暮らしたいか 自分の心に聞いてみてください