二つの家具


どちらもここ数週間の間に続けて仕上た物です

@ 掘りごたつ


正真正銘国産の楢の一枚板に脚をつけました 懸案だった堀コタツ
引渡し前に是非作って欲しいと正式に依頼され 急所製作しました


材料の手配

もちろんこのレベルの楢の一枚板なんか持ってるはずもなく あるところも検討がつかず
とりあえず雑木に詳しい知人に相談(木材屋さんでも職人でもないけれど)
こういう木になると もう出会えるかどうかで 一生懸命探しても見つかりません
需要がめったにないので木材屋さんも常に仕入れる訳では在りません
木が好きで昔仕入れた物を持っていて木の性格が解っていて管理がいいところ
知人に聞くと楢なら心当たりがあるらしい
彼の言う事なら信用してもいいので早速手配してもらう
仕上がりが幅が役90cm長さが1950cm程度
乾燥状態が良く将来狂いがなるべく少ない物を期待した
数日後送られてきた材料は表情 大きさ共文句なし 値段も何とか予算の範囲なので代金を支払う

早速加工に入る
明日から那須の現場に出発する前の日
粗木取りをし 留守の間に少しでも狂いを出しておくはずだった
ところが小口を切ってみると やや乾燥が悪い 素性も良く いい木なのに 今使うには不安が残る
加工の手が止まってしまった 1枚しかないのだから仕方がないのだけれど どうしても先に進めない
時間がなかったけれど 送ってくれた材木店に他の在庫はないか聞いてみると
あと何枚かあるらしい 場所を聞き 片道2時間かけて実物を見に行く事にした
使える物が無ければ単純に時間のロス しかし 折角高いお金を出す覚悟を決めて
良い物を作って下さいと自分に言った人の事を思うと不安の残る材料に手をかける気にはなれなかった
ある事を願って行ってみた

初めて行った材木店の店主は自分の事を知っていてくれた 
知人が随分自分を褒めて話していたらしい 恐縮した 
それから 行くと言ってこんなに早くほんとに来た人も初めてだとびっくりされた
話が弾み 色々見せてくれた 知人が人柄を保証するのが良くわかった
完璧とまではいかないもののいい材料が買えた
とりあえずかき集めて持っていたお金では足りず 後は振り込んで 後日配達してくれる事になった
これで安心して那須の現場に行く事が出来た
数日 那須の現場で仕事をし細かい指示をして千葉に戻る

製作
あまり時間がないのでどこまで出来るか 邪魔が入らない事を祈るばかり
会社を始めてから 心身共に無心に物に向って物を作る事が出来なくなった
人を育てるようになってからはなお更で 以前は現場の釘一本どこに落ちていたのかも解ってたのに
深く向き合う事が億劫になりがちになっている自分がいた
樹齢500年は経っているだろう これほどの樹をその力を損なわず家具として大切に
使ってもらえる物に仕上げるのだから 魂を込めなければ出来ない
別に 怖いわけでは無いが時間が無いのが気にかかる せかされる

まず 樹の様子を見ながら どの部分を使うか 切り落とさねばならない
一番緊張する場面 頭で考えていてはいつまでも 結論は出ない
この段階がきれいに済むと もう全体の構想は細部まで頭の中にあり 後は工程を進めるのみ

天板ならし
電気鉋でほこりまみれ これを失敗したら材料が無駄になる
躊躇していては駄目 効率よく慎重に進めていく

吸い付き桟を入れる
段取り 裏面の鉋掛け 桟の加工 
裏面の掘り込みはすべて手作業になる
一枚板に吸い付き桟を入れる 天板の立ち上がりのどの面も痛めることはしない

ここまでが一段階 これが上手くいくととりあえずホッとする
なにせ 材料が重い ひっくり返そうにも腰に爆弾を抱えてるから無理は出来無い
何とか工夫をしながら無事終了 
これまではぎ合わせた物で一番大きかった物は幅900の長さ2400
でも密度が違う 樹の格が違うといった感じ

表面 小口の仕上げ 
手鉋 横ずり 樹の性質はほんとに強い
最初に粗削りをしてからすでに反っている 桟が入っているにも係わらず
本当に動かなくなるのは後何十年後のことなのか
でもこの樹の生きてきた時間から比べればわずかな事なのかもしれない
いい道具には本当に助けられる
今回仕上る為に出した鉋はわずか2丁 すぐ切れなくなるから まめに研ぎはしたが
予想した時間の中で なんとか 仕上げる事が出来た

脚をつける
掘りごたつの場合 高さはどの位がいいかあれこれ調べてみる
座卓でもなく テーブルでもなく 少し悩んだが何とかクリア
掘りごたつながら布団はかけないので 座卓と一緒 天板と脚は一体型
予算に限りもあるので框はアメリカンブラックチェリーを使ったが 日本の桜と表情がほぼ一緒で良かった

表面を何回も自然素材の保護WAXを塗る

特に小口からの乾燥は気になるので更に時間の許す限り塗り重ねる

人手を頼み無事搬入となる
丁度建て主の奥さんが見にこられていた時で見てもらう事が出来た
表情から満足してもらえた様だ

当初の希望はもっと落ち着いた色合い樹を言われていた
しかし 見せ掛けの色より樹の素性の良さを優先させてもらった
楢は何も塗らなければやや白く 小洒落た印象ではないだろうか
しかし浸透性のWAXを塗り重ねる事で飴色に発色していく
やはりヨーロッパの上等な家具の材料に昔日本の楢が沢山使われ
現在 本物のアンテイークの家具の位になっている事がうなずける

あの家がこの家具があることで更に愛着の持てる家になれたなら
年齢を重ねたご夫婦にふさわしい格式のある家として認められる事を願っています

残念ながらこの家具の製作中の写真は取れませんでした製作の過程は この後なぜか続けて作ることになった栗のテーブルの写真を参考にして下さい


A 栗 テーブル


テーブルは脚と天板が分離しています

左の家具をつく際に 楢を探して貰った知人はいずれ音楽ホールを作りたいと
長年木材を集めてきました 一位 いすの樹 楢 その他自分たちは あまり手にしない樹を沢山持っています 
音楽ホール建築はまだ実行されませんが 今回結婚を期に新しい事務所を那須に置き
そこに置くメインのテーブルです
幅1m長さ2.2m厚さ10cm程の栗の一枚板 ややねじりはありましたが
表情栗の荒々しさより楢の品のよさを感じさせます
樹齢が500年も過ぎると似てくるのだろうか 製作の間中 頭の中にありました

木取り
やはり一番気を使う所 折角の一枚板なので多少皮面は残し大きさを確保しました

横ずり



ここできちんと平面を出しておくと後の仕上は格段楽になる
とりすぎず 逆目を起こさない様に慎重に的確に進める 

吸い付き桟


仕上げ 天板


 

仕上げ 小口





ABO ザ チェアーと